空になったケーキ箱と僅かなクリームすら残さず平らげられた皿を片付け居間に戻ると、銀時はジャンプを顔に乗せソファに寝転がっていた。
奥の和室では、サンタ帽を被ったままの神楽ちゃんが布団で寝息を立てている。最後に測った熱はほぼ平熱に近かったから、明日にはすっかり元気になっているかもしれない。その隣では神楽ちゃんに散々「サンタとはどんなオヤジなのか」を尋ねられて答え疲れたらしい新八君が畳の上で眠ってしまっている。
押入れから毛布を二枚取り出し、一枚をその体にかけて襖を閉めた。静かな部屋に響くのは、もう深夜番組の賑やかな声だけ。
残った毛布を銀時にかけ、顔の上のジャンプをそっと取る。と、目と目が合ったから少し驚いた。

「起きてたの?」
「寝たの?アイツら」
「うん。神楽ちゃんたら帽子被ったまま寝てるのよ?よっぽど気に入ったのねぇ」
「オイオイ、よだれとか付けねーだろーな。返さなきゃなんねーんだぞ、アレ」
「いいじゃない?黙って返せばわからないもの」
「言うね、お前も」

大きく伸びをしながら銀時が起き上がったので、その隣に腰掛けた。窓の外ではまだ雪が降り続いている。

「積もるかもねぇ」
「めんどくせーな。積もるとババアが雪かきしろとかうるせーんだよな」
「じゃあついでにうちの前もお願いしようかしら」
「何がどうついでだよ。いつかは溶けるからほっとけ、んなモン」
「そうねぇ。明日は晴れるみたいだし、すぐに溶けちゃうかもね。なんだかもったいない」

呑気な事言ってんな、と言いながら彼は大きく欠伸をする。やっぱり寝ていたんじゃないだろうか。いつもよりもとろりと重い瞼が、随分と眠たげ。

「お布団の用意しようか?」
「あ〜?お前どうすんの?泊まってくんだろ?」
「そうねぇ。でも二人とも和室で寝ちゃったし…」

あそこで四人寝るのは狭いだろうか。それとも神楽ちゃんがいつも寝ている部屋にでも行こうか。そんな事を考えていると、不意に肩を掴まれた。

「もーここでいいだろ。眠ィ。寝るぞ」

再び寝転がった銀時に引き寄せられて、一緒になってソファに倒れ込む。毛布ごと腕の中に収められて、身動きが取れない。

「このまま寝たら、朝にはどっちか下に落ちてそうねぇ」

ソファの幅を思うと夜の間にどうなるかが想像できて笑えてしまう。

「るせーな。落ちねーし落とさねーよ」

そんな言葉と共に、背中に回された腕の力が少しだけ強まった。
その居心地良い本日の寝床に、反対意見があるはずもない。おやすみなさい。それだけ言うと、おやすみ、と小さく声が返ってきた。


外は寒いけれど、ここはこんなに暖かい。目を瞑ると訪れる幸せな眠気に身を任せて、心の中で、そっと呟いてみた。

メリークリスマス。みんな。