たんぽぽの土手
穏やかな陽だまりに、強い風がほんの一瞬吹き抜けて。 川面に映る太陽の光が、揺れてキラキラと目元をかすめる。 目を覚ますと、上に広がるのは相変わらずの青い空。 視界の端にはたんぽぽの黄色と綿毛の白が。 アクビをして体を伸ばす。 ふと、たんぽぽ以外のものが視界にちらついて、横を見た。 穏やかな風に、揺れる髪。 いつの間に来てたんだ。 つーか、寝てるし。 自分に寄り添うようにして寝息をたてる姿を、じっと眺める。 約束なんかしたこともねぇのに、こんな晴れた日には、どちらからともなくここに来る。 特別なことは、何も無い。 ただ、2人、隣で過ごす時間。 横になったまま、手を伸ばして近くのたんぽぽを一輪摘んだ。 春の晴空によく映える黄色。 ふわふわ、勝手気ままに舞う綿毛を見送り、見守る、優しくて強い色。 幸せそうに眠る顔をもう一度見つめ、春の花をその髪に挿した。 そしてそのまま、柔らかい髪を指で梳く。 無防備な寝顔しやがって。 なのに、どうして俺が安心しちまってんだかね。 こんなふうに、ただ隣り合う春の日が、どれだけ俺を救ってるのかなんざ。 知らねェだろ、お前は。 偉そうに『護る』っつったてめぇが護られてんじゃ、立つ瀬ねぇやなァ。 ただ、こうしていられたらいい。 2人で。 …なんつーことが、今更言えるか、バカヤロー。 そんなことを思ってみる。 優しく暖かな日差しの下。 たんぽぽの土手で。 つーか、んな無防備に寝られたら、心配で俺が寝れねぇじゃねーか。コノヤロー。 前言撤回。 やっぱ、ある意味安心できねーわ。 こいつに惚れてる限り。 |